自動車の解体後に残るASRは、ウレタンや樹脂・ゴムなど可燃物が約75%、金属・ガラスなど不燃物が約25%を占める最終残渣です。
埋立・焼却だけではなく、資源としてリサイクルすることが循環型社会の実現に欠かせません。しかしASRを資源化するには “黒色プラスチック” の選別が大きなハードルとなります。
ASR は廃車を破砕した後に残るミックス残渣で、樹脂・繊維・ゴム・ガラス粉・非鉄金属などが複雑に絡み合っています。
従来はサーマル利用(熱回収)やセメント原料としての利用が中心でしたが、再資源化率向上のためには素材ごとに高精度で分別し、プラスチックや金属を高純度で回収する必要があります。
セメント原料や固形燃料(RPF/RDF)として利用する場合でも、混入した黒色プラスチックや微細金属が品質を劣化させる要因になります。
特にカーボンブラックで着色された黒色樹脂は他素材との分別が難しく、残渣に残りやすいことから“歩留まり”と“品質”の両面で大きなボトルネックとなっています。
一般的な光学式選別機は近赤外線(NIR)反射スペクトルを読み取り素材を識別しますが、黒色プラに含まれるカーボンブラック顔料はNIRをほぼ吸収してしまいます。
そのためNIRセンサーでは「黒がすべて同じ物体に見える」という盲点があり、ポリオレフィン(PE・PP)やスチレン系樹脂(PS・ABS)でも区別できません。
ブラックアイ
サナースが扱うSteinert社のユニソートブラックアイは、黒色プラスチックの乾式選別を世界で初めて可能にした選別機です。10~40mmの粒度で、PP・PE・PS+ABS・PVCなどの黒色樹脂を素材別に高精度で識別。ハイパースペクトルと中赤外線を併用し、従来識別できなかった黒色素材の分別回収を実現。前処理設備との連携や実機テストが可能な専用ラボも完備されています。
TOMRA
TOMRA「AUTOSORT™ BLACK」は、カーボンブラックを含む黒色プラスチックを樹脂別に識別・選別できる高性能機です。独自のMIR分光と改良FLYING BEAM™光源により、黒PE・黒PP・PSを粒度25〜120mmで高純度に分別。オプションで金属混入物の除去も可能。堅牢な構造で高スループットを実現し、TOMRA Insightによる遠隔保守にも対応しています。
STEINERT
サナースが扱うSteinert社のUnisortシリーズは、近赤外線(NIR)とハイパースペクトル技術により黒色プラスチックを高精度に選別する装置です。粒度や素材に応じて、X線、誘導、カラー、3Dセンサーなど複数技術を組み合わせ可能。ASR中の黒色プラ、PVC、金属を同時に識別・除去でき、複雑な残渣処理ラインでも高い選別純度と効率性を発揮します。
「黒を見分ける」ラインを立ち上げる前に押さえておきたいチェックポイントを紹介します。
下表では、黒色プラスチック対応の光学選別機を導入する際に見落としがちな混入率の設定からROI 試算・保守体制まで、工程設計で差がつく項目になります。
まずは自社の処理フローと照らし合わせながら、各内容をセルフチェックしてみてください。該当箇所に課題がある場合は、テストセンターでの実サンプル試験や前処理の最適化から着手すると、歩留まりと投資効率を同時に高めることが望めます。
混入率と目標純度を定義 | 原料 ASR 中の黒色プラ比率、PVC 許容値、最終製品(再生ペレット等)の品質規格を整理。 |
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粒度コントロール | 各機種の対応レンジ(例:UniSort BlackEye 10–40 mm)に合わせ、二段階スクリーン+風力分別でサイズ分級。 |
前処理で負荷を減らす | 磁選機→渦電流分離→重液分級などで金属・ガラス・ストーンを除去し、光学選別機の誤検出を防止。 |
選別テストの活用 | Sun Earth SSL(千葉)や TOMRA Test Center(ドイツ・大阪)、STEINERT Test Center(ドイツ)のラボで実サンプルを試験し、歩留まり・純度・処理能力を数値で確認。 |
ライン設計と ROI 試算 | ASR 1 t あたりの処理コスト/回収ペレット販売価格/CO2 クレジットなどを加味し、5 年以内の投資回収を目安にラインを構成。 |
保守・データ連携 | TOMRA Insight や STEINERT AI Vision などのクラウドプラットフォームを用い、エジェクタ開弁数・センサー汚れをモニタリング→歩留まり低下を予防。 |
ASR を資源化する最大の鍵は、従来見分けられなかった黒色プラスチックを素材別に選別できる技術を導入できるかどうかにかかっています。
黒を見分けられれば金属やPVCの混入も同時に抑えられ、再生プラスチックの品質と収益性が飛躍的に向上します。したがって「黒を見分ける力」を持つ選別機を提案・運用できる業者選びが、ASR リサイクル成功の最重要ポイントと言えるでしょう。
取り扱い メーカー数 |
21社 |
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メーカー種別 | 海外 |
製品の保守・サポートが強み。木更津に「パーツセンター」「QCセンター」「テストセンター」の機能を有した施設があり、パーツセンターでは7000種18万点のスペアパーツを保有。
取り扱い メーカー数 |
3社 |
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メーカー種別 | 国内・海外 |
日々環境分野において様々な研究開発を行い、1925年の創業から顧客のニーズを実現すべく品質向上に力を注いでいます。
取り扱い メーカー数 |
1社 |
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メーカー種別 | 国内 |
北九州にある本社を拠点に全国11ヶ所の工場を持ち、「スラグリサイクル事業」「環境非鉄リサイクル事業」「リサイクル機器プラント事業」に注力。
※2021年7月21日時点に、「選別機」または「産業廃棄 選別機」と「Google」で検索した際に表示された、中間処理に関する機器を取り扱っている企業の公式HPの上位57社を調査しました。
※取り扱いメーカー数及び対応種類の多い企業、かつ、プラント設計に対応している企業をピックアップしました。
循環型社会の実現に向け、廃棄物の削減に継続的に取り組むために、昨今の世情における産廃事業への取り組みについて掲載。
産廃事業社に求められる資質や姿勢など、事業において必要な見解をまとめています。